少年の死

4月15日(日) 晴

従姉が13歳の息子を失った
何の前触れもない別れ

私はその少年に会ったことはなく
自分自身の失った悲しみはない
にもかかわらず、いや、だからこそ
少年の母の悲しみがそのまま伝わってきて
打ちのめされる思いがする

少年の大切な持ち物たちは
その名を突然に「遺品」に変えてしまった

 卓球のラケット
 お気に入りの玩具
 愛読書の数々 そして
 次の週末に封切られる
 映画の前売り券

焼香に並んだクラスメートたちの
あどけない表情とぎこちないしぐさ

やはり神は存在するのだ

私が時折その存在を感じる
賑やかな八百万の神たちではなく
唯一絶対の神というものが

だって

育ち盛りの息子を親から奪い去るという暴挙が
誰からもとがめを受けることなく許されるなんて
そうとでも考えなければ
納得いくわけがないではないか

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ひだまり

12月10日(日) 晴のち曇

越冬中のナミテントウ

公園の日だまりで
越冬中の虫と遭う

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南京櫨

11月15日(水) 晴のち曇一時雨

ナンキンハゼ

「忍ぶれど色に出にけり我が恋は・・・」と
昔の人が言ったのだけど
あなたが思いをよせているのは
いったいどこの誰なのかしら

通りの向こうの銀杏の並木
感謝祭も過ぎぬうちから
飾り付けられたクリスマスのイルミネーション
ときおりふらりと立ち寄るシジュウカラ
それとも
白くはじけた実をついばみに来る
キジバトのペアのかたいっぽう

高い空にすうっとのびた飛行機雲

あの南京櫨
今年もまた恋に落ちた

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コノシメトンボ

9月16日(土) 晴のち曇

コノシメトンボ

今日を逃したらまた雨続き
久しぶりの青空にカメラをつかみ
秋の装いの公園へ

光を浴びてさらさらゆれるススキの穂
よく見れば可憐なタデ科の花々
メスの網に居候するジョロウグモのオス

ヒラアシハバチの幼虫が
今年もまた大発生をして
ハンノキの葉をもりもり食べる

ブタクサの花粉のせいか
初秋恒例のくしゃみの連発

少し鼻をすすり上げながら
赤とんぼと一緒に記念撮影をした

Sympetrum baccha matutinum トンボ科

南大沢の自然南大沢季節便りの秀さんに撮っていただきました。
どうもありがとうございます。

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3メートル

9月10日(日) 晴

久しぶりに彼女と声をかわした

2年と少し前に
マンション近くの草むらで
4つの丸い乳房をさらして
泥のように眠っていた彼女

あのときの子猫たちの行方は
私には皆目わからないし
例の餌やりの女性のことも
このところ話題にもならないのだけれど
他の数匹の猫たちと
彼女はあいかわらず
このマンションの周辺で暮らしている

エレベーターの前で
黒茶のかたまりが「なー」と鳴いて
私も「なー」と合いの手を入れる
傷ついた人と話すときのように
彼女の「なー」を
なぞるように繰り返す

彼女との距離は
あいかわらず3メートルくらい
立ち上がって歩き始めた私のあとを
彼女はやはり
距離を保ちながらついてくる

昼間の暑さをほのかに残した
夜風が頬をなでて行く

おやすみ

明日は雨が降るらしい

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軛(くびき)

9月4日(月) 晴

新宿

百貨店と駅とを結ぶデッキ

動く歩道で立ち止まり
痛む足をハイヒールから解放する

強化プラスチックの屋根のむこうには
少し雲のかかった初秋の空

御苑から迷い込んだのか
黒いアゲハが空をもとめて
はたはたと天井をさまよう

自由はすぐそこにあるのに
なぜ自分で自分を追い込むの
ほかに選ぶ道もあるはずなのに
どうして狭いところへ自分を押し込めるの

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ヤスデ

9月3日(日) 晴

ヤスデ

ただ脚の数が多いだけで
「不快害虫」なんてレッテルを貼られてしまう

けっして人を咬むわけでも
病気を媒介するわけでもなく
人知れずひっそりと
土壌を分解しているだけなのに

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チャドクガ

8月26日(土) 晴のち雨

チャドクガ

安っぽい正義感が
停止した思考が
クローンのようなエントリが
ウェブ上をヒステリックに増殖する

わらわらとどこからか涌いてきて
誰に命じられたわけでもないのに
右向け右の号令で
良識とか熟慮とか言論の自由とか
そういったものたちを
食い尽くして炎上させていく

戦争を起こすなんて きっと
いともたやすいことなのだ

Euproctis pseudoconspersa ドクガ科

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ボタンヅル

8月24日(木) 晴ときどき曇

ボタンヅル

斜面の植え込みを駆け上がる
きつい日差しをはねかえすような
涼やかな笑顔

そこにいることに今年初めて気づいたのに
来年はもう会えないかもしれないのだね

なぜって
君のいる場所のすぐ横に
大きなマンションが建つことになったから

Clematis apiifolia キンポウゲ科

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思草(ナンバンギセル)

8月22日(火) 晴ときどき曇

ナンバンギセル

ススキの根元で
ひっそりと
何を想うの

Aeginetia indica ハマウツボ科

(道の辺の尾花が下の思ひ草今更々に何か思はむ
                   万葉集巻第10・2270)

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