コノシメトンボ
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9月10日(日) 晴
久しぶりに彼女と声をかわした
2年と少し前に
マンション近くの草むらで
4つの丸い乳房をさらして
泥のように眠っていた彼女
あのときの子猫たちの行方は
私には皆目わからないし
例の餌やりの女性のことも
このところ話題にもならないのだけれど
他の数匹の猫たちと
彼女はあいかわらず
このマンションの周辺で暮らしている
エレベーターの前で
黒茶のかたまりが「なー」と鳴いて
私も「なー」と合いの手を入れる
傷ついた人と話すときのように
彼女の「なー」を
なぞるように繰り返す
彼女との距離は
あいかわらず3メートルくらい
立ち上がって歩き始めた私のあとを
彼女はやはり
距離を保ちながらついてくる
昼間の暑さをほのかに残した
夜風が頬をなでて行く
おやすみ
明日は雨が降るらしい
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9月4日(月) 晴
新宿
百貨店と駅とを結ぶデッキ
動く歩道で立ち止まり
痛む足をハイヒールから解放する
強化プラスチックの屋根のむこうには
少し雲のかかった初秋の空
御苑から迷い込んだのか
黒いアゲハが空をもとめて
はたはたと天井をさまよう
自由はすぐそこにあるのに
なぜ自分で自分を追い込むの
ほかに選ぶ道もあるはずなのに
どうして狭いところへ自分を押し込めるの
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9月3日(日) 晴

ただ脚の数が多いだけで
「不快害虫」なんてレッテルを貼られてしまう
けっして人を咬むわけでも
病気を媒介するわけでもなく
人知れずひっそりと
土壌を分解しているだけなのに
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